船から受け入れたLNGを、マイナス162℃の超低温のまま貯蔵するLNGタンクの大きさは、外径84m、高さ54m。巡視点検のため、このタンクの屋上を目指して、いつものように一歩一歩階段を上る。安全を確保しながら一番上まで辿り着くと、射水市を一望できる高さになる。
天候に関わらず、毎日現場へ行き、設備の稼働状況を細かく巡視点検する。巡視路は決まっているが、視点を変えることで、わずかな変化を見落とさないように万全を期す。
巡視点検では計器に頼るだけではなく、五感をフルに働かせて、ひとつひとつ、丁寧に確認作業を行っていく。圧力計の指示値を目で確認し、ポンプやファンの音を耳で聴き、手のひらで温度を確かめ、臭いを感じながら、異常を察知する。そのためには経験を重ね、感覚を磨くことが大切になる。もしも異常が発生すれば電力の安定供給に支障をきたしかねないため、どんな状況においても集中力を保ち、確実な点検が求められる。どんな気象条件においても、いつもと同じように地域に電気を届けるために、わずかな変化にも気を配る。
石炭火力は、燃料である石炭の状態を目で確認することができる。しかしLNG火力では、燃料であるLNGの気化ガスは無色無臭であるため、万一に備えてガス検知器は絶対に欠かせない。懐中電灯やPHSは全て防爆仕様のものを携帯して、安全に配慮しながらガスの漏れや燃焼状態の異常を、音や振動、温度などの変化から発見する。
ガランとしたタービン建屋内には、タービンの重く低い運転音が響く。その中でポンプやファンに聴診棒を当てて、機器内部の音に耳を研ぎ澄ます。キュルキュルとした音が聞こえた場合には、軸受部分の潤滑油切れがおきていると判断し、油の補給を行う。蒸気系統では、リークチェッカーと呼ばれる金属板を用いて点検を行う。蒸気で金属が白く曇るため、目に見えないわずかな漏洩を確認することができる。建屋内に張り巡らされた燃料や冷却水を通す配管の異常を早期発見できるように最善を尽くす。
火力発電所の運転監視は、24時間365日中央制御室で行っている。現場での巡視点検と中央制御室で管理する運転データから、異常を早期に発見し、トラブルの未然防止に努めている。「異常の兆候を感じたとき、自分で判断し、初期対応する力を磨いていきたい」。電力の安定供給と高い生産性の両立を実現することが、これからも火力発電所に求められる。その一員として、大きな力になりたいと前を向く。
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