福井配電部 保守課
前田 進
定期巡視では、1日100基の電柱を点検
各地域にある変電所から各家庭に安定して電気を送る役割を担っているのが私たちが所属する配電部です。電柱、電線、変圧器などの配電設備の形成や、保守メンテナンスを日々行っています。以前に勤務していた福井配電部では福井市内を中心とした約8万4千基の電柱を、そして現在配属されている丹南配電部では、越前市、鯖江市など、約5万3千基の電柱の保守を行っています。
巡視は、大きく分けて定期巡視と目的別巡視の二つ。定期巡視はエリアの全配電設備を5年周期で行い、緊急に改修が必要なものや錆など計画的に改修が必要なものを発見するため、1日100基ほど巡視・点検します。目的別巡視では、植物のつるや鳥の巣がないかなど、時期や範囲・着眼点を絞った巡視を必要の都度実施しています。山間地など、車が入れない場所に立つ電柱は、コンクリート製ではなく鉄でできているので、雨風による錆などを特に注意して点検を行っています。
一つの灯りがお客さまを救う
現在、私は班長として現場に出ることが多いので、班員の安全確保をまず第一に考えています。大型の台風や雷などでの停電時には、すぐに復旧作業に取りかかりたいのですが、作業員が柱上で身動きが取れなくなったり、反対に強風で振り落とされることが予想される場面があります。その時は復旧を一時断念せざるを得ず、お客さまの状況を考えると非常に申し訳なく悔しい気持ちを抱きながら待機を指示することもあります。
危険と隣り合わせの過酷な業務ではありますが、私たちを支えてくれているのは、お客さまからの感謝の言葉です。2019年の台風15号の時には、千葉県の災害復旧応援に向かい、長時間停電していた養護施設に高圧発電機車で仮送電を実施。電気が灯った瞬間に感激され、その後も数日間にわたって現地対応していた私たちに、「ありがとう」と言葉をかけて頂きました。一つの灯りがお客さまにとって大きな安心感につながるのだと改めて実感させられました。
災害を想定した実践的な訓練
近年では、配電設備そのものや資機材の進歩によって、配電線事故停電件数が減少し、復旧そのものに携わる経験が減っています。一方で台風や水害、地震といった災害は、全国で毎年のように発生しています。「万が一に備える」という意味でも、配電マン一人ひとりが、自分の現場スキルを少しでも向上できるよう、定期的な訓練は欠かせません。高圧線の断線復旧や変圧器の取替え、樹木の伐採や倒木の撤収など、山間地などで所有者の方に場所をお借りし、実際の状況を想定した訓練を行っています。
数年前から、電柱番号が振り当てられた配電ナビを車に搭載し、無駄なく巡視ルートを組めるようになりました。またドローンの活用を始めたことも効率化につながっています。冬の山間地では、以前はかんじきやスノーシューを履いて全ての現場に出向いていましたが、離れた場所からでもドローンのカメラで確認でき、災害時には復旧作業前の被害の状況確認などにも活用しています。
入社当初、停電復旧の改修を終えて送電した時、真っ暗な街並みに明かりが灯った瞬間の感動は今でも覚えています。お客さまからお礼のお言葉や笑顔を頂いた経験、そして自分自身が生活する中で電気の大切さを歳を重ねるごとに感じてきたことが、仕事の責任感に繋がっています。すべてのお客さまにこれからもずっと安定した電気を、そして「安心」を届けていきます。
使命を胸に。 前田 進